式辞
先ほど入学認定をした436名の新入生のみなさん、御入学おめでとうございます。
今まで大切に、慈しみ育ててこられた保護者の皆さま、ご入学を心よりお祝い申し上げます。ご臨席を賜りました来賓の皆様には、厚く御礼申し上げます。
本校の入学式は、焼香と合掌で始まります。初めての方にとっては少し驚かれたかもしれません。
本校は、真宗大谷派の流れをくむ仏教の学校で、鎌倉時代の仏教者 親鸞聖人 を宗祖としています。
そのもとには多くの弟子が集まりましたが、本人は門弟たちを「弟子」ではなく「同朋(どうほう)」 と表現されました。仏教的な言葉としては「どうぼう」と読むそうです。
これは「共に歩む仲間」という意味です。仏様の前では、先生も弟子もない。みな等しく、悩みをかかえ、迷って生きている存在である。
そういう真宗の人間観をあらわす言葉が「どうほう」「どうぼう」 です。
そんな同朋の精神をいただいた、この同朋学園・同朋高等学校。素敵な名前だなと思います。
社会はさまざまな矛盾と対立にあふれています。
自分とは違う考え方と出会ったとき、自らの考えにこだわりすぎたり、他者の意見に耳を傾ける余裕が無くなったり、腹を立ててしまうことがあるかもしれません。それでも、他者の行動や欠点を責め立てることのないようにしたいものです。
違いを理解し、寛容な心で受け止めて、お互いが前向きな姿勢を取り戻して成長を目指せる道を模索した方が、世界が少し明るく見えてくることでしょう。
「コミュニケーション能力が大切だ」 とよく言われますが、コミュニケーション能力は「相手を言い負かす力」 ではなく、「自分とはまったく違う価値観の人とも理解し合おうとする力」「考え方が違う人とも一致できるところを見つけてゆける力」です。
違いを認め、それぞれの個性が輝く豊かな関係を築いていくこと、それこそが同朋高校の建学の理念「同朋和敬」です。
我々教職員一同、皆様と一緒に学びあえる仲間でありたいと思います。
皆さんの3学年上の先輩たちは、この間の2月、自分たちで手づくりをした卒業式で、同朋高校を巣立っていきました。
「僕のこと」 と題された30分を超えるさまざまな言葉たち。その言葉の端々に、最高の3年間を過ごした充実感と達成感を感じることができました。
皆さんにも、そんな3年間を過ごしてほしい。そこで、約3年後の卒業の日、「いい3年間だった」 と言えるための秘訣をお伝えします。
それは、「自分で行動する」 ということです。
自分から行動を起こすためには、目の前に起きた事態や問題に対して、必ずどうしたら良いかを「自分で決める」 必要があります。自分で決めるためには、その問題の持つ意味や他の誰かが発した言葉がどういう意味や影響を持つのか、「自分で考える」 必要があります。そもそも自分で考えるためには、起きていることをしっかりと「自分の目で見る」 必要があるでしょう。
自分の目で見て、自分で考えて、自分で決める。このプロセスをたどってとられた行動は、きっと「正解」になります。なぜなら、きっと皆さんは、それを自分で「正解」 だと思えるまでこだわってやりきるからです。卒業していった先輩たちもそうやって3年間をやり遂げていきました。だから「ああ、なんて素敵な日だ」と卒業の日を迎えられたのだと確信しています。
3年後という、何かかなり遠くの話をしているような気がしたかもしれませんが、実はこの「自分で見て、考えて、決めて、行動する」 というプロセスは、みなさんが日常的に行っているさまざまな行動のなかに、無数に存在します。
最近の話で言えば、それぞれがいろいろな経緯を辿ったにせよ、今こうして同朋高校への入学を決め、今日、入学式に足を運んだのもひとつの自分で決めた行動です。
これからの1日1日を納得できるものにするかどうかもまた、自分の心次第です。
皆さんの1日1日が、喜びと発見に溢れた日々であることを願って、本日の式辞といたします。
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